

わたしはフランス、ランド地方の自然が豊かな村で生まれ育ちました。実家は農園を営んでいましたが、そこで食べた野菜、鶏など地元で採れた食材による母親の心のこもった料理は、いまのわたしの食習慣と味覚の原点になっています。わたしにとって、料理は、そんな子供の頃の気持ちを瞬時に蘇らせることが出来て、また季節やテロワール(その土地の個性)を再発見させてくれる、素晴らしいものです。
美味しい料理があれば、家族や友人と心を分かち合うことが出来る。そんな風に、家庭で料理を味わう喜びを伝えるために、「ナチュールレシピ」という料理の本を出しました。これまでのわたしの料理本は、プロの目線で作ったものが中心でしたが、このレシピ集は、家庭の主婦たちが気負わず、楽しみながら作れる、シンプルで、ヘルシー、そして体にも良い、自然派家庭料理ばかりです。実際、日本の主婦の方が、この本におさめられた、190全ての料理をレシピ通りに作ってくれました。わたしがこの料理本で何よりも伝えたかったことは、家庭で家族たちが味わう料理の歓びです。

わたしが好きな料理、家族に振舞ってあげたいのは、やはり自分が子供の頃、ランド地方で食べた、野菜中心の料理です。南仏のプロヴァンスに別荘があるのですが、そこに行ったときは毎朝、市場に行くのがとても楽しみです。その風土で育った、野菜や果物は食べる人の力となってくれます。また魚でも、高級なものだけでなく、安く手に入りやすい、体にも良い、サバやイワシを良く使います。
日本にも素晴らしい魚や肉がありますが、わたしが好きなのはやっぱり土の中で育った野菜です。れんこんやねぎ、さつまいもなど、土で採れる野菜はその季節でしか味わえないもの。そんな食材をシンプルに料理して、家族で囲むテーブルは決して派手ではないですが、とても豊かだと思うのです。
料理は食材に恋し、家族と分かち合うための、愛の物語。家族の団欒に、愛のこもった料理があれば、そこで出される料理は、すべて素晴らしいと思います。そして、美味しく食べることが、よりよい生き方につながっていくのです。
「ルイ・キャーンズ」「アラン・デュカス」の2軒のレストランで同時に3ツ星を獲得した史上初のシェフとなる。現在は料理人だけでなく、レストランクリエーター、ホテルのオーナーとして世界11カ国29のレストランを経営し、【彩りある生活】と【豊かな食の楽しみ】を広めている。

アラン・デュカスが厳選した6軒のビストロを代表するシェフ達がお届けするレシピや、インタビューなどをお届けします。